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【トピックス 】敦煌市の防風林造成(中国視察2)
中国蘭州市に続いて敦煌市伊塘湖造林地について紹介します。
敦煌市は蘭州市よりさらに500kmほど北西部に位置し、シルクロードの拠点として有名な地域です。年間降水量は40mm程度で広大なゴビ砂漠の南部に位置しています。雨量が極めて少ないうえ、内陸性気候で冬期には氷点下数十度にもなるなど、寒暖の差が大きく、植物の生育には極めて厳しい環境です。
前回の急峻な皐蘭山造林地と異なり、こちらでは、砂漠地近くの平地13 haほどに、ポプラの一種の胡楊が植栽されていました。近くに空港や関連施設があり、防風と防砂の林帯造成を目指しているようです。
砂漠地付近の植栽地
県林業育成協会が支援している試験地 13haほどの胡楊の植栽地
植樹法は黄土に羊フンのたい肥を混ぜ植栽するとともに、根際の土壌だけに水分が染み込むように、植栽木の周りに高さ0.1~0.2m、1.5×1.5mほどの方形の土壁をつくっています。前の視察地の「魚鱗抗」と目的が似ています。当地でも、地下水を利用した散水装置が設置され、半月に一度ほどの割合で散水が行われています。降水量は少なく厳しい生育条件であるものの、適切な管理のもと、植栽後6年経過し、胡楊の生育は順調のようです。
貴重な地下水を根際に浸透させるため土壁をつくる
植栽している胡楊は、中央、西アジア、北アフリカなどに広く分布する樹種で、大きいものは高さ20m、直径1mほどにもなります。長い間の伐採や開発の結果、在来林分は減少し現在は禁伐となっているとのことです。陽光を好み、熱、乾燥、塩分、強風に強く、年数を経て太くなった樹幹には多量の水分が含まれていて、ポプラやニセアカシアなどの外来導入樹種と異なり、乾燥地において、年齢を経ても活力、成長が持続することが知られているとのことです。「胡楊は生きて千年枯れず、枯れて千年倒れず、倒れて千年腐らず」というように、3000年の長生きの木であるとの説明を現地で受けました。植栽木は、外来種から郷土種まで、いろいろ試験している状況であるように思えました。
敦煌市莫高窟近くの胡楊の成林木
植物にとって降水量は最も大切な生育条件です。通常、年間降水量が500mm以下だと自然状態では森林が成立しにくいとされ、ステップ、サバンナなどの草原地帯となります。100mm以下だと、サボテンのような果肉植物の一部が生育可能であって、砂漠化すると言われます。視察地の蘭州市は250 mm、敦煌市は40mmの乾燥地域でした。植え付け穴への雨水導入のために、階段や深穴、土壁など周辺土壌の整形を行い植林し、さらに、植樹後に、地下水をくみ上げ人工的に散水しています。経費と労力は相当なものです。
我が国は平均すれば1600mm程度なので、降水量だけみれば森林の生育に問題はなく恵まれた条件下にあります。むしろ、降水量が多いゆえの排水や地下水対策が必要となる場合が多々あります。これまで、崩壊地や地滑り地の植栽が各所で行なわれてきましたが、保水・排水に優れた土壌状態を作るという意味では、いまだに検討の余地があるように思えます。
今回の緑化視察地では、乾燥地帯と多雨地帯の違いはあるものの、植栽方法は、土壌改変を伴う治山造林の範疇に入るような手法で行っていました。こうした植樹方法がさらに改良・定着し、かっては森林が多かったといわれる黄土高原で、少しづつ緑の回復が進むことを願う次第です。
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