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【トピックス 】林業構造物の維持管理について~林道橋を事例として~
公共構造物の長寿命化に向けて、個別施設計画の策定のための基礎調査が急がれております。その中でも、車両通行に供する橋梁、トンネルは事故に直結するため、優先して監視、修繕を行うべき施設です。
林道橋は、山間奥地に分散的にあること、通行量が少なく外部からの指摘が少ないことなど管理者にとっては現況を把握しづらい施設です。また、土石移動の多い浸食渓流に敷設されること、丸太積載の重車両の通行が多いことなど、劣化や破損が起きやすい施設でもあります。劣化状態を放置すれば事故を招く恐れがあり、事故の予見可能性が高いと判断された場合は管理者責任も問われかねません。今回は林コンが行った林道橋調査の結果を基に、構造物の維持管理について考えてみます。
1.林道橋の点検結果(平成29~30年度)
林コンでは、平成29~30年度に、県内の林道56路線で、102の橋梁を点検調査しました。主に近接目視ですが、必要に応じて触診や打音等の非破壊検査を行っています。その結果、最も危険度が高く、緊急に何らかの対策が必要な「Ⅳ緊急措置段階」の橋梁は、2か年の調査では幸いにも見当たりませんでしたが、今後支障が生じる可能性のある「Ⅲ早期措置段階」が12基(11.8%)、予防的に措置を行うことが望ましい「Ⅱ予防保全段階」が66基(64.7%)確認されました。ほぼ健全な橋梁は24基(23.5%)でした。
今後支障が生じる可能性のある「Ⅲ早期措置段階」の12基については、橋台基礎部が長期の流水や流石などで洗堀、摩耗、破壊が発生し上部構造に影響を及ぼす恐れがあるもの、床版や橋台のコンクリート部分に亀裂、剥離が生じ内部鉄筋の腐蝕が進んでいるもの、側壁ブロックが欠損して背後の浸食が進んだもの、防護柵が腐蝕劣化したものなどがあります。これらの橋梁の多くは設置後50年ほど経過したものです。「Ⅱ予防保全段階」の66基については、劣化程度は様々ですが、特に、主桁、横桁、床版などのコンクリートのクラックや表面剥離による鉄筋露出や腐食、滞水やひびわれによる遊離石灰を伴った漏水、支承の腐食などが随所に見られました。
洗堀による橋台破損
支承の腐蝕
2.劣化原因1~長年の化学変化~
林道橋の多くは鉄筋コンクリート構造であるため、主な劣化原因は、他のコンクリート構造物と同様に、塩害、中性化、アリカリシリカ反応(ASR)などのコンクリートの化学変化があげられています。これらは造築当時に鉄筋コンクリートの知見が十分でなかったため発生したものです。
塩害は、沿岸部の飛来塩分や洗浄不十分な海砂、凍結防止剤などによるもので、コンクリート内部に侵入した塩化物イオンが内部鉄筋を腐食させ性能低下を起こすものです。中性化は、大気中の二酸化炭素がコンクリート中に侵入しPHを低下させることにより、鉄筋表面の不動態皮膜を破壊し、鉄筋腐食を起こすものです。アルカリシリカ反応は、骨材中の特定の鉱物がコンクリートのアルカリ分と反応し膨張やひび割れを起こす現象です。1980年代に、骨材中のシリカ分の含有量制限などの対策が取られたため、その後の構造物では起こりませんが、それ以前の構造物では、ひび割れ、鉄筋の腐食や破断、白色ゲル析出などの現象を引き起こします。
表面剥離による鉄筋腐食
3.劣化原因2~設計や保守管理の問題~
前記のケミカルな劣化原因とともに、林道橋の設計面や保守管理的な原因も考えられています。一般的に、林道橋のみならず、古い橋梁は設計荷重が小さく、床版厚や鉄筋量も少ないといわれております。特に、昭和40年代前半に設置されたRC床版などは配力筋が現行の1/3~1/4程度とされています。床版厚自体の不足や近年の過大な輪荷重なども相まって、橋に縦方向の荷重が繰り返しかかった結果、漏水、ひび割れ、剥離が発生したものと推測されます。曲げひび割れなどが入ったコンクリート面は、上下動の繰り返しにより、さらにコンクリート摩耗が促進され、鉄筋に沿ったひび割れに発展し、鉄筋腐食も加わり、RC構造物に深刻な劣化をもたらします。
また、集排水施設の土砂づまりや路面の土砂堆積が各所にみられます。雨水との接触環境を長期間保つとRC構造物の耐久性が著しく下がると言われており、土砂除去等のメンテナンスが大切と思われます。
橋路面の土砂堆積
4.当面の対策
現時点では全体の2/3にあたる66基が「Ⅱ予防保全段階」ですが、これらは「Ⅲ早期措置段階」に至る前段階の状態として理解する必要があります。いわば、橋機能に支障が生じる一歩手前の段階であり、それが「雨後の筍」のごとく多くの箇所で見受けられるのです。これらは、人の虫歯と同じで、放置して回復することはなく時間の経過とともに状況が悪化していくことが考えられます。
対策は早いほうが経費負担が少なくて済みます。劣化・破損が著しい場合は通行止めなどの措置検討とともに、点検調査から一歩進んだ詳細調査を行う必要があります。欠損部のコンクリート充填、基礎部の根継ぎ工など具体的な補修工事の検討や、新設との経費比較なども行い、結果的に、橋梁自体の架け替えが必要となる場合もあります。
また、コンクリートの劣化度合いによって、塩化物イオン、二酸化炭素、水などの侵入を防ぐため、表面含侵工法、表面被覆工法、ひび割れ注入工法などのチッピング充填処理、塗装、防水処理、また、電気防食や防錆材を活用した鉄筋・支承の防食処理などが必要と思われます。
通行止めとなった橋梁
厳しい予算事情の中、早期の対応が結果として補修予算を少なくできるため、林道橋の場合は、第一に林道改良事業の活用が考えられます。また、補修する橋の奥地森林が森林環境譲与税で整備される場合は、路網整備や橋梁補修も譲与税予算の対象にできる可能性があるため、森林整備と道路補修の配分など利用区域の関係者で十分検討することが大切です。
周知のように施設の経年変状は、橋梁以外の公共構造物にもあり、例えば、年数の経過したダム工や人家裏の土留め工、なだれ防止施設、地すべり防止施設などにも見られます。治山施設の場合は、従来の機能強化対策を充実させた新たな補助事業が創設される予定です。国の制度も新設から維持管理の時代へと変化していることを感じます。
土留め工のアルカリシリカ反応
5.定期点検を確実に行い、劣化予測、トータルコストの算定へ
林道橋は耐用年数が50~70年とされておりますが、本県では既に耐用年数に到達した橋梁が各所にあり、今後ますます増加します。また、主伐期を迎え輪荷重の大きい車両の通行が増加することも認識しておく必要があります。前述のように、管理が不十分で事故が発生した場合、管理者責任が問われる可能性があります。
まずは予防措置としての定期点検を確実に行っていく必要があります。国の基準では、通常、定期点検を5年に1回のサイクルで行うこととされております。また、既に建設部サイドでは、施設の劣化予測、優先度判定、ライフサイクルコストの算定など、長期の維持管理に向けた分析に点検資料を活用しています。点検結果は、将来の維持・補修等の基礎材料となるので大切に保存しておく必要があります。
洗堀による橋台破損
支承の腐蝕
2.劣化原因1~長年の化学変化~
林道橋の多くは鉄筋コンクリート構造であるため、主な劣化原因は、他のコンクリート構造物と同様に、塩害、中性化、アリカリシリカ反応(ASR)などのコンクリートの化学変化があげられています。これらは造築当時に鉄筋コンクリートの知見が十分でなかったため発生したものです。
塩害は、沿岸部の飛来塩分や洗浄不十分な海砂、凍結防止剤などによるもので、コンクリート内部に侵入した塩化物イオンが内部鉄筋を腐食させ性能低下を起こすものです。中性化は、大気中の二酸化炭素がコンクリート中に侵入しPHを低下させることにより、鉄筋表面の不動態皮膜を破壊し、鉄筋腐食を起こすものです。アルカリシリカ反応は、骨材中の特定の鉱物がコンクリートのアルカリ分と反応し膨張やひび割れを起こす現象です。1980年代に、骨材中のシリカ分の含有量制限などの対策が取られたため、その後の構造物では起こりませんが、それ以前の構造物では、ひび割れ、鉄筋の腐食や破断、白色ゲル析出などの現象を引き起こします。
表面剥離による鉄筋腐食
3.劣化原因2~設計や保守管理の問題~
前記のケミカルな劣化原因とともに、林道橋の設計面や保守管理的な原因も考えられています。一般的に、林道橋のみならず、古い橋梁は設計荷重が小さく、床版厚や鉄筋量も少ないといわれております。特に、昭和40年代前半に設置されたRC床版などは配力筋が現行の1/3~1/4程度とされています。床版厚自体の不足や近年の過大な輪荷重なども相まって、橋に縦方向の荷重が繰り返しかかった結果、漏水、ひび割れ、剥離が発生したものと推測されます。曲げひび割れなどが入ったコンクリート面は、上下動の繰り返しにより、さらにコンクリート摩耗が促進され、鉄筋に沿ったひび割れに発展し、鉄筋腐食も加わり、RC構造物に深刻な劣化をもたらします。
また、集排水施設の土砂づまりや路面の土砂堆積が各所にみられます。雨水との接触環境を長期間保つとRC構造物の耐久性が著しく下がると言われており、土砂除去等のメンテナンスが大切と思われます。
橋路面の土砂堆積
4.当面の対策
現時点では全体の2/3にあたる66基が「Ⅱ予防保全段階」ですが、これらは「Ⅲ早期措置段階」に至る前段階の状態として理解する必要があります。いわば、橋機能に支障が生じる一歩手前の段階であり、それが「雨後の筍」のごとく多くの箇所で見受けられるのです。これらは、人の虫歯と同じで、放置して回復することはなく時間の経過とともに状況が悪化していくことが考えられます。
対策は早いほうが経費負担が少なくて済みます。劣化・破損が著しい場合は通行止めなどの措置検討とともに、点検調査から一歩進んだ詳細調査を行う必要があります。欠損部のコンクリート充填、基礎部の根継ぎ工など具体的な補修工事の検討や、新設との経費比較なども行い、結果的に、橋梁自体の架け替えが必要となる場合もあります。
また、コンクリートの劣化度合いによって、塩化物イオン、二酸化炭素、水などの侵入を防ぐため、表面含侵工法、表面被覆工法、ひび割れ注入工法などのチッピング充填処理、塗装、防水処理、また、電気防食や防錆材を活用した鉄筋・支承の防食処理などが必要と思われます。
通行止めとなった橋梁
厳しい予算事情の中、早期の対応が結果として補修予算を少なくできるため、林道橋の場合は、第一に林道改良事業の活用が考えられます。また、補修する橋の奥地森林が森林環境譲与税で整備される場合は、路網整備や橋梁補修も譲与税予算の対象にできる可能性があるため、森林整備と道路補修の配分など利用区域の関係者で十分検討することが大切です。
周知のように施設の経年変状は、橋梁以外の公共構造物にもあり、例えば、年数の経過したダム工や人家裏の土留め工、なだれ防止施設、地すべり防止施設などにも見られます。治山施設の場合は、従来の機能強化対策を充実させた新たな補助事業が創設される予定です。国の制度も新設から維持管理の時代へと変化していることを感じます。
土留め工のアルカリシリカ反応
5.定期点検を確実に行い、劣化予測、トータルコストの算定へ
林道橋は耐用年数が50~70年とされておりますが、本県では既に耐用年数に到達した橋梁が各所にあり、今後ますます増加します。また、主伐期を迎え輪荷重の大きい車両の通行が増加することも認識しておく必要があります。前述のように、管理が不十分で事故が発生した場合、管理者責任が問われる可能性があります。
まずは予防措置としての定期点検を確実に行っていく必要があります。国の基準では、通常、定期点検を5年に1回のサイクルで行うこととされております。また、既に建設部サイドでは、施設の劣化予測、優先度判定、ライフサイクルコストの算定など、長期の維持管理に向けた分析に点検資料を活用しています。点検結果は、将来の維持・補修等の基礎材料となるので大切に保存しておく必要があります。
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