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【トピックス 】広島災害地の土質について
災害復旧で派遣された広島県内の土砂崩れは、初期報道では、5000か所発生したと言われ、その土質は、多くの箇所が「まさ土」と呼ばれる花崗岩由来の細かい土砂からなる、たいへん崩れやすいものでした。こうした土質は、広島県の太平洋側一帯に分布しており、災害が発生しやすく農業生産力も低いとされ、国から「特殊土壌地帯」に指定されています。
また、まさ土に混じり、直径1メートルを超えるような巨石が住宅地まで到達した場所もあります。これは、花崗岩の硬い部分が風化せずに残った「コアストーン」と呼ばれる岩石で、被害を拡大させた一因といわれています。
まさ土は花崗岩と同様、長石、石英、雲母などの成分を含み、よく見ると、きらきら光る細かい石英などが見えます。また、水はけ、保水力が良く、余分な肥料分がないので園芸用、土木用としても広く知られています。
まさ土は我が国に広く分布しており、本県では、湯沢市三関、小野、横堀地区などに分布していることが知られています。また、まさ土のような崩落が起きやすい特殊土壌は、本県では、鹿角地域のシラス土壌があります。この地域のシラスは大昔の十和田湖噴火の火砕流堆積物です。
風化が進んだ花崗岩
まさ土による林道盛り土面 コアストーンの一部と思われる岩石
【トピックス 】西日本を襲った7月豪雨災害から学ぶ
(増加する記録的豪雨)
本年7月に発生した西日本豪雨(気象庁名「平成30年7月豪雨」)では、6月28日~7月8日の総降水量が四国地方で1800ミリ、東海地方で1200ミリ、九州北部地方で900ミリ、近畿地方で600ミリを超えるところがありました。西日本の多くの観測地点で24、48、72時間降水量の値が従来の観測記録を更新する豪雨でした。本県の年平均降雨量が1700ミリ程なので、四国では10日ほどで秋田県の1年分の雨が降ったこととなります。
気象庁によると、豪雨の要因は、東シナ海付近からの南西風と、太平洋高気圧沿いの南風の2つ多量の水蒸気の流れ込みが西日本付近で合流・持続し、梅雨前線も停滞したためということです。高気圧や前線、台風の影響が重なったためで、こうした気圧配置は、頻度は西日本に多いものの、何処に発生しても不思議ではありません。
近年の気象白書では、日本で大雨をもたらす雨雲は、南の海上で高気圧の下、蒸発した海水を多量に含む傾向があり、温暖化による気温上昇などにより、将来的に1日に計200ミリ以上の大雨となる日数が増加すると予測しています。
また、林野庁資料によると、地球温暖化の影響により、降水がより強く煩雑となっており、1時間降水量が80mm以上となる豪雨が増加傾向にあるほか、72時間降水量の歴代記録も相次いで更新しているとのこと。本年7月豪雨前にも、豪雨が多かった平成25年には、全国約1300カ所の気象庁観測所の1割に相当する134地点で、観測史上1位の1時間降水量を記録しています。
派遣先の広島県の林道災害現場
(「想定外の雨」について)
豪雨により広範囲で土砂崩れが発生した広島県の坂町では、高さ11m、長さ50mの石積みの砂防ダムが決壊しました。堤本体の大部分が崩壊しており、県担当部局は「想定以上の土砂が流入したため」としています。国土交通省によると、砂防ダムの大規模な決壊は異例といいます。
また、住宅約20棟が全半壊した広島市安芸区では、裏山が崩れ、2月にできたばかりの治山ダムを乗り越えた土砂が住宅地に流れ込みました。広島市では降水量が複数の地点で7月の観測史上1位を記録。治山ダムを管理する県の担当者は「想定外の雨だった」と説明しています。(以上、マスコミ報道抜粋)
広島県の災害現場(後方は治山ダム)
砂防ダムの決壊や治山ダムの土砂乗り越えが発生し下流域に大きな被害が発生しましたが、砂防と治山、両部局の県担当者とも「想定外の雨量」を原因の一つと語っています。
構造物の設計上、想定内の雨量とは、統計的に処理された確率雨量か、過去の最大雨量をいいますが、通常は確率雨量をいうと思います。したがって、施設管理者からみた「想定外の雨量」とは、設計上用いた確率雨量を超えた雨が降ったことを表現したものと思います。
災害ダムからの土石乗り越え 住宅への土砂進入(平成25年大館市)
(平成25年藤里町)
(確率雨量について)
設計上使用する確率雨量については、国の基準で、それぞれの構造物の機能や保全物に与える影響の大きさなどにより使い分けられています。森林土木関係では治山事業100年、林道事業10年で、土地改良の排水事業は10~30年、ため池は200年、河川砂防事業は100年が原則となっています。あくまで原則で、例えば、一級河川の国直轄は200年以上、他の一級河川や二級河川は10~100年と保全するべき対象によって大きく異なり、また、過去の最大雨量や土砂混入率も考慮することともなっています。
確率雨量は排水施設の規模に直結し、過大な設計をすれば工事費が掛かりましになる場合が多いし、過小であれば、雨が降るたびに構造物から水があふれ、人的に災害発生の原因を作ることとなります。
また、日本全体でみると地域によって大きく異なり、100年確率日雨量でみれば、北日本は100~200ミリ、雨量の多い西日本太平洋側は200~400ミリといわれます。現在の気象庁資料によれば、本県の秋田市は163ミリ、東京は289ミリ、雨量の多い高知は445ミリ、7月豪雨で大きな被害を出した広島県呉は218ミリとなっています。今回1800ミリの雨が観測された高知で災害報道が比較的少ないのは、もとより大きな確率雨量で設計された構造物が多かったからかもしれません。
29年7月豪雨災害(秋田市) 30年5月豪雨災害(北秋田市)
(確率雨量の変化と既設構造物)
ある年に記録的な豪雨が発生したら、それを入れない統計と入れた統計では,統計処理は行うものの、当然、確率雨量が異なってきます。観測期間が短くデータが少ない場合は、再現期間の精度を増すために、できるだけ最近のデータを加えるのが原則となります。本県のデータなどは、40年ほどの観測データを元に100年確率雨量を決めているということなので、今後ともデータを追加し精度を高めていく必要があります。
もし、確率雨量の数値が今後、大きく変化していくならば、たとえば、過去の確率雨量で設計した構造物は将来は大丈夫でしょうか。治山ダムなどは将来土砂が満砂することを想定し開水路計算も行っており、さほど問題になりませんが、林道の排水施設などは心配です。たとえ、設計上の因子の中に余裕高、安全率を加味していること、確率雨量だけでなく、流出係数、粗度係数など他の因子との掛け合わせで排水量が決まることを考慮したとしても不安が残ります。今後、こうした観点からも、既存構造物の再点検の必要があるかもしれません。
既設構造物の点検調査
(ハード施設の限界を知る)
西日本豪雨では、ダム施設が土石などを食い止め被害を免れた地区がある一方で、砂防ダムが決壊し下流域に甚大な被害を出した地区、完成したばかりの治山ダムを越えて土砂が住宅地に流れ込み多数の犠牲者が出た地区などもあります。
異常豪雨はしばしば地球温暖化が原因とされますが、地球温暖化は長期的な動向であり、将来の雨量に大きく影響していくことが予想されます。過去の雨量の統計が将来の雨量を表わすとは限らず、降水量の長期変化はいよいよ無視できない段階にあると考えます。こうした確率雨量の変動期には、「想定外」と言わざるを得ない、確率雨量値以上の雨量が多々発生すること自体を、「想定する」必要があります。
災害が多発している今日、治山ダム等構造物の計画的な設置が強く求められますが、厳しい予算状況の中でそれにも限界があります。ハード対策はもちろん必要ですが、こうした想定が難しい雨量増加が予想されるときこそ、施設点検や住民の意識喚起などソフト対策を重視する必要があります。
特に、用地交渉なども含め、事業実施前の地元説明については十分に行ってきているところですが、市町村職員の方に聞いたところ、事業完了後の施設の地元周知は必ずしも十分とは言い切れないようです。確率雨量や設計諸元の理解はなかなか難しいものの、ハード施設の限界についての理解を得ることだけでも効果があると思います。広島市安芸区では、治山ダム完成時、ハード対策を過信しないことを地元に伝えていたと聞きます。今後は、防災におけるソフト対策強化の観点から、市町村と連携し、施設完成後の地元周知をこれまで以上に強化していく必要があると考えます。
今後有望なドローンによる施設監視 事業の地元説明会
【 ニュース 】西日本豪雨で被災した広島県の復旧支援を行ってきました
死者・行方不明者230名の大きな被害が出た西日本豪雨災害(平成30年7月豪雨災害)の早期の復旧にむけて、当社団から、中嶋業務部長、佐々木主幹、木村専門員の3名が、広島県北広島町の林道被災地の復旧支援を行ってきました。
派遣先の広島県では、 7月6~8日の豪雨により、死者・行方不明者が110人を超え、県内各所で水害や土砂災害が発生し、現在でも、道路、水道などのライフラインの復旧が急がれています。治山、林道などの林業被害については山間地であることから未だ不明な箇所が多いようですが、現地からの聞き取りによると、早期の復旧を要する林道施設だけでも300か所あるとのことです。こうした未曾有の災害の中、短期間で復旧対策をまとめあげる技術者が限られているため、一般社団法人広島県森林協会の要請に応じ、7月29日~8月10日の13日間、当社団の経験豊富な技術者3名が派遣されたものです。
当社団職員に託された被災現場は北広島町政所など林道7路線8か所の路面崩壊地など。周辺林層はスギやヒノキの壮齢林が多く、路面はカーブ設定した盛り土の箇所が大部分でした。路体維持には、こうした箇所の雨水処理が重要ですが、このたびの降水量は観測史上最大を記録した観測地点が多数出るなど、想定以上のものでした。
また、土質は花崗岩が風化した「まさ土」でした。「まさ土」は、四国、中国地方に広く分布しており、地表に近い層に堆積していることが多く、強い降雨により、崩落、流出しやすい土層として知られています。先の平成26年8月豪雨による広島市の土砂災害においても、この土質が大きな被害を引き起こした一因とされています。
広島県担当者と被災現場の確認
昨年度から、激甚災時の国の災害査定においては、設計図書は平面図、標準断面図、必要写真は被災全景写真、起点、終点写真となっており、測量や事務作業の一部効率化が図られています。しかし、いづれは詳細設計が必要であり、後日の負担軽減を考えて、詳細設計を想定した細部測量もこなしてきました。猛暑日が続く炎天下で現地測量を行い、設計図作成、設計数量等のとりまとめを行い、派遣先で完成できなかった箇所は秋田に持ち帰って仕上げ、8月末を目途に、成果品を広島県森林協会に送付する予定としています。国の災害査定は9月中旬から始まるので、その日程に間に合わせる計画です。
また、多忙な現地関係者に負担をかけず作業を行う必要があり、移動車、測量製図機器、パソコンなど必要器具は全て秋田からの持ち込みで、現地関係者との打ち合わせも最小限で行いました。派遣終了後、遠く秋田から早期に被災地支援を行ってくれたことに対し、広島県森林協会から謝意が伝えられました。
まさ土による林道路体の崩落現場
35度以上の炎天下の測量に備えて 現地の測量スタッフの皆さんと
当社団では、これまで、東京都三宅島噴火災害、福島県南会津豪雨災害、新潟県上越地震災害、岩手県宮古市豪雨災害など他県で発生した大規模災害には、当社団の務めとして、率先して災害現場に駆けつけ、復旧計画策定に向けた現地支援を行ってきております。
全国各地で豪雨災害が発生する昨今、本県でも他県からの支援を必要とする大きな災害がいつ発生するかわかりません。こうした災害への備えも含め、当社団では、技術と経験を生かし、今後とも、災害支援のネットワークを大切にしてまいりたいと思います。
【 ニュース 】平成31年度林業予算の要望活動に出席しました
去る7月19日、秋田県森と水の協会が主催する次年度予算の要望活動に津谷永光会長他12 名が出席し、林野庁、財務省、国会議員に対し、次年度林業予算の要望活動を行いました。当社団から小川理事長、熊谷専務理事、三浦理事が出席しました。
特に、近年、治山、林道予算が伸び悩んでいるため、市町村長等正会員49 名、林業団体長等賛助会員20 名の連名で要望書を作成のうえ、本県の現状や要望の具体的な内容を関係各位に説明してきました。
(要望内容)
1.治山事業予算の確保
①25年災や29年災の復旧のための予算確保
②火山噴火対策予算の確保
③治山施設の点検予算確保とメンテナンス技術の開発等
2.森林整備予算の確保
①造林補助事業予算の確保
②林内路網の予算確保と橋梁等の点検改修予算の確保
③「林業成長産業化総合対策」の予算確保
要望先は沖修司林野庁長官はじめ公共事業予算担当の各課室長、6名の自民党地元選出国会議員などです。
沖長官からは、「このたびの西日本豪雨災害からも明らかなように治山事業は重要。当初予算をしっかり確保し事前防災に努めたい。森林環境税については、本年度が制度改革の年、贈与税として措置される来年度が実行の年。林業の成長産業化に向け努力したい。」との言葉を頂きました。
沖林野庁長官への要望活動
自民党石井参議院議員への要望活動
【 ニュース 】東北4県の森林土木コンサルタント職員の研修を行いました
7月12~13日、青森、岩手、秋田、福島各県の森林土木コンサルタント職員の技術研修が仙北市田沢湖町で行われました。当日は、あいにくの雨の中、各県から13名が参加し、秋田駒ヶ岳の土石流対策や木材使用の橋梁について研修しました。
初めに、秋田駒ヶ岳の土石流対策として、現在施工中の石黒沢NO1鋼製谷止工や先達川の既設砂防堰堤などを視察しました。この地区の渓流は駒ヶ岳火山活動に起因する土石の移動が活発で、昭和40年代から防災施設が設置されてきているものの、施設の満砂や老朽化が進み、近年、追加の対策工事を実施してきています。火山地域特有の大転石と抑制するべき土砂量の多さにより、堤体ボリュームも大きくなり、年度ごとに予算配分に応じた対策工事を実施してきています。
現地では、国立公園内であることから、景観に配慮した化粧型枠や在来種による緑化工についての質疑などが活発に行われました。
また、木材の土木活用の一例として、田沢湖県有林のCLT橋梁を視察しました。
土木施設の長寿命化が課題となる中、橋梁床版へのCLT活用は、軽量であり、主桁補強が不要であること、施工が容易なことなどから、近年注目されてきております。他方、強度や耐久性に不明な点もあることから、秋田県木材高度加工研究所が現場施工後の検証を行っております。参加者は、施設の説明を受けた後、興味深く設置状況などを観察しておりました。
日本各地で集中豪雨等が増加する中、対策工法の調査設計を担う各県コンサルタントの技術向上と情報共有が大切であることから、今後ともこうした研修を随時実施していく予定としております。
【 お知らせ 】第7回定時社員総会を開催しました
平成30年6月14日、一般社団法人秋田県林業コンサルタントの定時社員総会が秋田市内で開催されました。当日は、市町村社員や社団役職員など約30名が出席しました。
初めに、小川理事長が、「平成24年の一般社団法人移行後、多くの皆様のご支援を受け、経営は順調に推移した。今後とも、森林・林業のエキスパート集団として、公益目的事業や治山林道の調査測量事業とともに、橋梁点検、ドローン業務など時代の要請に応じた新たな事業にも挑戦し、県土の保全と健全な森林育成、林業振興に寄与してまいりたい。引き続き、皆様のご支援とご協力をよろしくお願い申し上げる。」と挨拶しました。
また、来賓として出席した県農林水産部佐藤次長からは「治山林道の適切な調査測量や災害時の迅速な対応に感謝申し上げる。今後とも、「緑の財産」を守り育てるため、これまでの経験と技術を生かし、県土保全と健全な森林育成、林業の振興に向け、ご支援、ご協力をよろしくお願いする」 との祝辞をいただきました。
小川理事長挨拶 佐藤県農林水産部次長祝辞
続いて、社団職員の小田嶋文雄計画課長が30年勤続表彰を受けました。小田嶋課長は主に林道事業の調査測量を担当してきており、今後はさらなる路網整備が必要となってくることから、ますます活躍が期待されています。
議案審議においては、29年度事業報告や公益目的支出計画、理事改選などが議題となりました。29年度事業は、7月、8月の災害発生に伴う受託業務の増や山地災害危険地区調査事業の受託などにより増額決算となりました。また、公益目的事業は森林機能モニタリング調査や森林土木等技術研修事業などを計画通り実施したほか、秋田市河辺 にCLT木橋を設置しました。理事改選については理事全員の留任が決まるなど、すべての提出議案が承認されました。
30年勤続表彰を受ける小田嶋課長
【 お知らせ 】当社団が「森林整備保全事業発注者支援機関」に認定されました
認定団体の具体的な支援内容は、県や市町村が工事発注にあたり事前に必要となる工事設計書の積算補助や、工事発注後の現場の監督補助で、認定期間は今後5年間です。
公共工事等の発注内容は年々多様化し、また、発注側の技術者も徐々に不足しつつあるといわれております。また、近年、豪雨災害が多発しており、発生時の迅速な対応ができるように体制を整えておく必要があるといわれております。このため、既に、本県の建設土木、農村整備分野では同様の制度が動いているところです。
当社団では、発注者支援認定団体として、今後とも社団内の体制を整え、発注者の多様な要請に的確に対応してまいる考えです。
【 ニュース 】梅雨期前の豪雨災害が発生しました
また、土砂災害に影響が大きいといわる最大時雨量(㎜)は、阿仁合49、男鹿46、田沢湖37、比立内37、五城目36などで、雨量強度も極めて大きいものでした。
この豪雨による林業関係被害は、5月末調査時点で、林地崩落が27か所、林道の路肩決壊等が153路線、311か所で被害額3億6千万円となっています。
なお、記憶に新しい昨年7月下旬の豪雨では、秋田、仙北、由利、平鹿地区を中心に、総雨量が300mm、時雨量は70㎜を超えた地域が発生しています。
本県の5月下旬は西日本に比べ少雨で、すがすがしい田植えの時期でもあり、こうした大雨はほとんど経験がありません。まさに、この時期としては異例の豪雨であり、これも近年の異常気象の一端なのでしょうか。
県森林整備課では、今後、早期の復旧を図るため、災害資料を早急に取りまとめ、県議会の6月補正予算提出、国の災害査定などを進めたい計画としています。
今後、梅雨期がやってくることから被災箇所の再災害のリスクもあります。地元自治体や住民の皆さんは、林地、林道被害地の拡大崩落などが発生しないように、シートや土嚢などを活用し、できるだけの応急措置を行っていただきたいと思います。
写真提供 秋田県森林整備課
【トピックス 】ドローン散歩:空から見た針広混交林
こうした針広混交林は、技術的に育成管理が難しく、また、丸太価格の上昇が見込めず労務不足が顕在化してきた今の森林経営には、若干荷が重いかもしれません。
一方で、スギ一斉林に比べ水源涵養や土砂災害防止機能に優れ、生物多様性の保全に役立つといわれており、集中豪雨が多発し、森林の環境保全的な側面が重視される今日において、治山事業や森づくり税事業で計画的に造成されています。
【トピックス 】林道橋の維持管理について
(はじめに)
インフラ施設の長寿命化を進めるため、県や市町村では、これまでつくってきた治山、林道構造物について、施設の劣化状況や対策概要などを判定する点検調査を行っています。当社団でも、こうした点検調査を市町村から受託しておりますが、点検結果から、改めて、林道橋の維持管理の大切さについて考えてみました。
(点検結果概要)
当社団では、平成29年度に、県内3市の林道21路線で、49の橋梁を調査しました。調査点検は、近接目視により行い、必要に応じて触診や打音等の非破壊検査などを併用して行っています。
その結果、緊急に対策が必要な「Ⅳ緊急措置段階」の橋梁は、幸いにも見当たりませんでしたが、今後、支障が生じる可能性のある「Ⅲ早期措置段階」が5基(10%)、予防的に措置を行うことが望ましい「Ⅱ予防保全段階」が30基(61%)確認されました。健全な橋梁は14基(29%)でした。
(早期措置段階)
「早期措置段階」の5基については、橋台基礎部が長期の流水や流石などで洗堀、摩耗、破壊が発生し上部構造に影響を及ぼす恐れがあるもの、床版や橋台のコンクリート部分に亀裂、剥離が生じ内部鉄筋の腐蝕が進んでいるもの、側壁ブロックが欠損して背後の浸食が進んだもの、防護柵が腐蝕劣化したものなどがあります。これらの橋梁の多くは設置後50年ほど経過したものです。多くは、根継工や断面修復などの早期の対策が必要かと思われます。
洗掘による橋台破損 側壁ブロックの欠損
(予防保全段階)
「予防保全段階」の30基については、劣化程度は様々ですが、特に、主桁、横桁、床版などのコンクリートのクラックや表面剥離による鉄筋露出や腐食、滞水やひびわれによる遊離石灰を伴った漏水、支承の腐食が随所に見られました。
林道橋だけでなく、一般的に古い橋梁は設計荷重が小さく、床版厚や鉄筋量も少ないといわれております。特に、昭和40年代前半に設置されたRC床版などは配力筋が現行の1/3~1/4程度とされています。床版厚自体の不足や近年の過大な輪荷重なども相まって、橋に縦方向の荷重が繰り返しかかった結果、漏水、ひび割れ、剥離が発生したものと推測されます。曲げひび割れなどが入ったコンクリート面は、上下のすり合わせの繰り返しにより、さらにコンクリート摩耗が促進され、鉄筋に沿ったひび割れに発展し、鉄筋腐食も加わり、RC構造物に深刻な劣化をもたらします。
遊離石灰を伴う漏水 支承の腐食
このため、現時点では「予防保全段階」にとどまっている30基ですが、「早期措置段階」に至る前段階の状態と解釈する必要があります。いわば、橋機能に支障が生じる状態の前段階が、「雨後の筍」のように、多くの箇所で見受けられるということです。
対策は早いほうが経費負担が少なくて済みます。これらの箇所は、今後、コンクリートのチッピング充填処理、鉄筋・支承の防食処理、塗装、防水処理などが必要と思われます。
また、集排水施設の土砂づまりや路面の土砂堆積が各所にみられます。雨水との接触環境を長期間保つとRC構造物の耐久性が著しく下がると言われており、土砂除去等のメンテナンスが大切と思われます。
橋路面の土砂堆積 排水施設の土砂詰まり
(今後の対応)
今回の定期点検の結果は、今後の維持・補修等の計画を立案する上で参考となる基礎的な情報であり、林道の管理主体である市町村では、今後、こうした診断情報を蓄積していくこととしております。また、診断結果を生かし、「個別施設計画」を策定し、今後、具体的な対策を検討していく予定となっております。
林道橋の耐用年数は50年程度とされておりますが、既に耐用年数に到達した橋梁が各所にあり、今後ますます増加します。林道橋の定期点検は、国の基準では、通常、5年に1回のサイクルで行うこととされております。老朽橋が増加することに加え、スギの主伐期を迎え輪荷重の大きい車両の通行が増大することも踏まえ、こうした定期点検は確実に行っていく必要があります。
【 ニュース 】プラザクリプトン「学習交流の森」にCLT木橋を設置しました
CLTは板材(ラミナ)が直角に交わるように重ねて接着した構造用材料で、ヨーロッパで開発・実用化が進み、8~10階建てのマンションや、中・大規模の商業施設や公共施設、集合住宅などが実際に建てられています。
日本では、近年、木材の需要拡大の観点から、林野庁や国土交通省がCLTを推進しており、建築基準法上の位置づけを得て、主に、高層階の建築材料としての活用が期待されています。
今回は、さらにCLTの可能性を広げようと、橋梁の床版に活用したものです。CLT床版は、すでに、平成29年に、仙北市石倉沢県有林で施工済みです。
「学習交流の森」 では、2基の床版が、それぞれ3×1m、4×1mで、厚さは、いずれもラミナ厚2.4cmの5層で計12cmです。3m橋には防虫剤を使用し、4m橋にはFRPラッピング処理を行い防腐薬剤は塗っていません。
屋外で使用する木材について、強度や耐久性を持続させるには、劣化・腐朽対策が重要です。今後、設置後の耐久性等について、佐々木教授が中心となり検証することとしています。
プラザクリプトン「学習交流の森」に設置されたCLT木橋
【トピックス 】一年を振り返って~降雨量からみた7月22、23日災害~
本年は、7月、8月と集中豪雨に見舞われ、林地、林内路網の災害が県内各所に発生しました。家屋の被災や農業被害などに遭われた方々には、改めてお見舞いを申し上げます。
特に、7月22~23日は、総雨量が雄和348mm、横手314mm、大正寺305mm、角館301mmなど気象台の県内各観測所で300mmを超えました。また、雨量強度という側面から、最大1時間当たり雨量を見ると、大館市陣場78mm、秋田市雄和73.5mm 、横手市横手68.5mm などとなっていますが、由利本荘市北部付近で、レーダーと観測所の観測値による解析雨量(速報値)では、1時間当たり100mmを解析したという情報もあり、記録的な激しい雨となりました。近年の局所的な集中豪雨は、県内40カ所に満たない気象台観測所だけでは十分に捕捉しきれない側面があり、今後は、こうしたレーダーとの組み合わせによる推定雨量も地域の実態を知る上で重視されること思われます。
一般的な雨量の指標としては、降り始めからの総雨量、24時間、3時間、1時間などが重要で、洪水、浸水、農作物被害、土砂災害などの注意喚起の予報の目安とされています。概して、大流域の河川の洪水は、より長時間の雨の総量が関係し、流域が小さくなるほど、より短時間の降雨強度が関係するようです。冠水害は総雨量、土砂災害は3時間程度の降雨強度との関係が深いとも言われております。
よく聞く「バケツをひっくり返したような雨」とは、時雨量50mm以下で用いられる用語のようです。40年前、この「バケツ雨」を、強雨で知られた三重県尾鷲の林地内で経験したことがあります。当地区のヒノキ林を視察中、突然の激しい雨に出くわし、衣服はすぐにびしょ濡れとなり、数メートル先が見えない状態となりましたが、幸い、近くの視察バスに逃げ込み事なきを得ました。正確な雨量は定かではないものの、後日、地元の説明者に「あれがバケツ雨だ」と説明されました。ヒノキ林で有名な林地内の地表を観ると、Ao層がなくなり、むき出しとなった支持根が林内各所にあり、過去の激しい雨の影響を感じました。
今夏、秋田で発生した100mm近い雨とは、こうした「バケツ雨」の2倍なので、土砂崩落、表土の流出に直結し、また、現場にいれば強い恐怖を覚えるのではないかと思います。 秋田気象台の資料によれば、県内の時雨量100 mm 越えは、平成25年8月9日に鹿角観測所などで記録しています。 県北部に大被害をもたらし、また、田沢湖町供養佛地区で山腹崩壊が発生し多数の人命を失ったあの豪雨です。
当時の県議会公表資料によれば、県北部を中心に、林地・林道施設は被害額32億円で、林地は山腹崩壊等112箇所、27億円。林道は路肩決壊等197路線445箇所、5億円となっています。(一部、25年7月災害含む)
今回の被害額は、林地・林道施設が21億円で、林地については、県の中央・南部を中心に、山腹斜面の崩壊等113箇所13億円、林道については、中央・南部、北秋田地域を中心に、249路線670箇所7億円(29年8月県議会資料)です。林野災害は山間部奥地に発生する場合が多く、短期間に全てを掌握することは難しいものの、数値を単純に比較しても、平成25年以来の大きな豪雨災害です。
気象資料によれば、日本の最大時雨量の記録は、九州、四国など西日本中心に150mmを超えています。総雨量もさることながら、時雨量が土砂災害に及ぼす影響は大きいと考えます。しかも、近年、範囲が局部的でその強度も増しているように思います。時雨量100mm超えの雨が再度襲ってくるかもしれません。災害への備えを点検するとともに、有事の際は、是非、当社団にもご一報を頂きたいと思います。
(渓流の浸食崩壊:写真提供秋田地域振興局)
(道路脇の山腹崩壊:写真提供 秋田地域振興局)