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秋田県林業コンサルタントからのお知らせ

 

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【 ニュース 】27年ぶりに農林水産大臣賞を受賞~全国治山・林道コンクールから~


    去る11月27日、日本治山治水協会等が主催した「治山林道コンクール」の表彰式が、全国多数の関係者の出席のもと、東京都で行われました。
 治山工事で、本県から27年ぶりに、農林水産大臣賞に万六建設株式会社(治山施設機能強化工事:仙北市岩井沢地区)、治山木材使用工事は、本県で初めて、林野庁長官賞を有限会社米弘組(予防治山工事:北秋田市大渕地区)が受賞しました。両賞とも多数推薦された箇所の中での最高賞でした。(治山工事43地区、木材使用工事26地区)また、林道工事で、株式会社門脇木材(合板製材生産性強化対策事業林業専用道:秋田市中山沢線)が日本林道協会長賞を受賞しました。受賞された関係者の皆様、誠におめでとうございます。

    左から米弘組薄井社長、万六建設田中社長、日本林業
    協会前田会長、林野庁太田次長、門脇木材門脇社長
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【トピックス 】ドローンによる簡易測量を試みました

林業において種々な活用法が模索されているドローンですが、例えば、災害発生時、急峻地形、河川など常水地の測量などに活用できます。北海道胆振東部地震においては、広域で緊急性を要したため土砂崩壊地でのドローン測量が効果を発揮したようです。
 今回試みたのは五城目町の馬場目川の横断測量です。レーザー測量は地盤高を精度よく計測できますが、ドローン写真からも、経費少なく、座標が推計できます。この場合、地盤高でなく草木などの遮蔽物標高が算出されるので、現場状況を観察しながら一部を補正します。新規技術にアナログ要素を取り入れる点が林業技術的ともいえます(図の黒点線が推定横断面)。


  

【トピックス 】林業構造物の維持管理について~林道橋を事例として~

   公共構造物の長寿命化に向けて、個別施設計画の策定のための基礎調査が急がれております。その中でも、車両通行に供する橋梁、トンネルは事故に直結するため、優先して監視、修繕を行うべき施設です。
 林道橋は、山間奥地に分散的にあること、通行量が少なく外部からの指摘が少ないことなど管理者にとっては現況を把握しづらい施設です。また、土石移動の多い浸食渓流に敷設されること、丸太積載の重車両の通行が多いことなど、劣化や破損が起きやすい施設でもあります。劣化状態を放置すれば事故を招く恐れがあり、事故の予見可能性が高いと判断された場合は管理者責任も問われかねません。今回は林コンが行った林道橋調査の結果を基に、構造物の維持管理について考えてみます。
1.林道橋の点検結果(平成29~30年度)
   林コンでは、平成29~30年度に、県内の林道56路線で、102の橋梁を点検調査しました。主に近接目視ですが、必要に応じて触診や打音等の非破壊検査を行っています。その結果、最も危険度が高く、緊急に何らかの対策が必要な「Ⅳ緊急措置段階」の橋梁は、2か年の調査では幸いにも見当たりませんでしたが、今後支障が生じる可能性のある「Ⅲ早期措置段階」が12基(11.8%)、予防的に措置を行うことが望ましい「Ⅱ予防保全段階」が66基(64.7%)確認されました。ほぼ健全な橋梁は24基(23.5%)でした。
 今後支障が生じる可能性のある「Ⅲ早期措置段階」の12基については、橋台基礎部が長期の流水や流石などで洗堀、摩耗、破壊が発生し上部構造に影響を及ぼす恐れがあるもの、床版や橋台のコンクリート部分に亀裂、剥離が生じ内部鉄筋の腐蝕が進んでいるもの、側壁ブロックが欠損して背後の浸食が進んだもの、防護柵が腐蝕劣化したものなどがあります。これらの橋梁の多くは設置後50年ほど経過したものです。「Ⅱ予防保全段階」の66基については、劣化程度は様々ですが、特に、主桁、横桁、床版などのコンクリートのクラックや表面剥離による鉄筋露出や腐食、滞水やひびわれによる遊離石灰を伴った漏水、支承の腐食などが随所に見られました。


                                     洗堀による橋台破損

 
                                             支承の腐蝕

2.劣化原因1~長年の化学変化~

    林道橋の多くは鉄筋コンクリート構造であるため、主な劣化原因は、他のコンクリート構造物と同様に、塩害、中性化、アリカリシリカ反応(ASR)などのコンクリートの化学変化があげられています。これらは造築当時に鉄筋コンクリートの知見が十分でなかったため発生したものです。
 塩害は、沿岸部の飛来塩分や洗浄不十分な海砂、凍結防止剤などによるもので、コンクリート内部に侵入した塩化物イオンが内部鉄筋を腐食させ性能低下を起こすものです。中性化は、大気中の二酸化炭素がコンクリート中に侵入しPHを低下させることにより、鉄筋表面の不動態皮膜を破壊し、鉄筋腐食を起こすものです。アルカリシリカ反応は、骨材中の特定の鉱物がコンクリートのアルカリ分と反応し膨張やひび割れを起こす現象です。1980年代に、骨材中のシリカ分の含有量制限などの対策が取られたため、その後の構造物では起こりませんが、それ以前の構造物では、ひび割れ、鉄筋の腐食や破断、白色ゲル析出などの現象を引き起こします。
 
                                    表面剥離による鉄筋腐食

3.劣化原因2~設計や保守管理の問題~

  前記のケミカルな劣化原因とともに、林道橋の設計面や保守管理的な原因も考えられています。一般的に、林道橋のみならず、古い橋梁は設計荷重が小さく、床版厚や鉄筋量も少ないといわれております。特に、昭和40年代前半に設置されたRC床版などは配力筋が現行の1/3~1/4程度とされています。床版厚自体の不足や近年の過大な輪荷重なども相まって、橋に縦方向の荷重が繰り返しかかった結果、漏水、ひび割れ、剥離が発生したものと推測されます。曲げひび割れなどが入ったコンクリート面は、上下動の繰り返しにより、さらにコンクリート摩耗が促進され、鉄筋に沿ったひび割れに発展し、鉄筋腐食も加わり、RC構造物に深刻な劣化をもたらします。
 また、集排水施設の土砂づまりや路面の土砂堆積が各所にみられます。雨水との接触環境を長期間保つとRC構造物の耐久性が著しく下がると言われており、土砂除去等のメンテナンスが大切と思われます。
 
                                       橋路面の土砂堆積

4.当面の対策

 現時点では全体の2/3にあたる66基が「Ⅱ予防保全段階」ですが、これらは「Ⅲ早期措置段階」に至る前段階の状態として理解する必要があります。いわば、橋機能に支障が生じる一歩手前の段階であり、それが「雨後の筍」のごとく多くの箇所で見受けられるのです。これらは、人の虫歯と同じで、放置して回復することはなく時間の経過とともに状況が悪化していくことが考えられます。
 対策は早いほうが経費負担が少なくて済みます。劣化・破損が著しい場合は通行止めなどの措置検討とともに、点検調査から一歩進んだ詳細調査を行う必要があります。欠損部のコンクリート充填、基礎部の根継ぎ工など具体的な補修工事の検討や、新設との経費比較なども行い、結果的に、橋梁自体の架け替えが必要となる場合もあります。
 また、コンクリートの劣化度合いによって、塩化物イオン、二酸化炭素、水などの侵入を防ぐため、表面含侵工法、表面被覆工法、ひび割れ注入工法などのチッピング充填処理、塗装、防水処理、また、電気防食や防錆材を活用した鉄筋・支承の防食処理などが必要と思われます。


          通行止めとなった橋梁


 厳しい予算事情の中、早期の対応が結果として補修予算を少なくできるため、林道橋の場合は、第一に林道改良事業の活用が考えられます。また、補修する橋の奥地森林が森林環境譲与税で整備される場合は、路網整備や橋梁補修も譲与税予算の対象にできる可能性があるため、森林整備と道路補修の配分など利用区域の関係者で十分検討することが大切です。
 周知のように施設の経年変状は、橋梁以外の公共構造物にもあり、例えば、年数の経過したダム工や人家裏の土留め工、なだれ防止施設、地すべり防止施設などにも見られます。治山施設の場合は、従来の機能強化対策を充実させた新たな補助事業が創設される予定です。国の制度も新設から維持管理の時代へと変化していることを感じます。
 
        土留め工のアルカリシリカ反応


5.定期点検を確実に行い、劣化予測、トータルコストの算定へ

 林道橋は耐用年数が50~70年とされておりますが、本県では既に耐用年数に到達した橋梁が各所にあり、今後ますます増加します。また、主伐期を迎え輪荷重の大きい車両の通行が増加することも認識しておく必要があります。前述のように、管理が不十分で事故が発生した場合、管理者責任が問われる可能性があります。
 まずは予防措置としての定期点検を確実に行っていく必要があります。国の基準では、通常、定期点検を5年に1回のサイクルで行うこととされております。また、既に建設部サイドでは、施設の劣化予測、優先度判定、ライフサイクルコストの算定など、長期の維持管理に向けた分析に点検資料を活用しています。点検結果は、将来の維持・補修等の基礎材料となるので大切に保存しておく必要があります。

【 ニュース 】令和2年度林業予算の要望活動に出席しました


 去る11月8日、秋田県森と水の協会が主催する次年度予算の要望活動に津谷永光会長他10名が出席し、林野庁、財務省、国会議員に対し、次年度林業予算の要望活動を行いました。当社団から小川理事長、熊谷専務理事、三浦理事が出席しました。
 特に令和元年度は、「臨時特別の措置」が設定されたことにより、公共予算の大幅な増加が達成できましたが、未だ、県内の事業要望箇所が多数あることから、市町村長等正会員、林業団体長等賛助会員の連名で要望書を作成のうえ、本県の現状や要望の具体的な内容を関係各位に説明して参りました。

 (要望内容)
1.治山事業予算の確保
 ①25、26年災、29、30年災の復旧のための予算充実
 ②防災・減災、国土強靭化のための臨時・特別の措置が講じられたが、本県の  対策工事着手率は未だ3割であり、継続的な予算充実
 ③治山施設の点検や補修に関わる予算充実
2.森林整備予算の確保
 ①地球温暖化防止、県土保全、森林資源の循環利用に資する造林公共事業予  算の確保
 ②林内路網の計画的な整備や橋梁等の改修に要する予算の拡充
 ③林業成長産業化総合対策等の充実・強化のための予算の確保

 要望先は本郷浩二林野庁長官はじめ公共事業予算担当の各課室長、金田衆議院議員ほか4名の自民党地元選出国会議員などです。本郷長官からは、「林野庁として、しっかり予算対策を講じて参るので、皆様方からも引き続き応援をよろしくお願いする。」などの言葉を頂きました。


       本郷林野庁長官への要望(金田先生、富樫先生、石井先生同席)
 
              長官へ要望内容を説明   

              富樫衆議院議員への要望

【 ニュース 】北海道胆振東部地震の復旧対策事業地などを視察しました


   去る10月9~11日の3日間、東日本大震災発生後8年を経過した岩手県野田村の災害復旧状況と、昨年9月に発生した北海道胆振東部地震の災害対策の状況を視察しました。これは、当社団の公益業務の一環として、森林土木事業に関係する職員の技術向上を目的に実施したもので、今回は、市町村、県、当社団の職員計20名が参加しました。

 初めに、岩手県野田村前浜地区の海岸防潮護岸工を視察しました。当地域は久慈市から15Kmほど南下した野田村十府ケ浦海岸に位置し、大震災による津波により、海岸施設やクロマツ林、そして、内陸市街地に甚大な被害が発生しました。

 震災後の復旧対策として、防潮護岸の新設や既設護岸の嵩上げ、基礎地盤の液状化対策などが行われ、現在では、計画したTP+14mの防潮護岸が全て完成しております(被災前はTP+10~12m)。また、林帯幅50~150mのクロマツ林帯も消失したため、完成した膨張護岸の背面に地下水位に応じた盛り土を行いつつ、防風柵設置とクロマツ苗植栽を行っています。計画では、総延長1340m、事業費44億円に及ぶ海岸林整備があと一年ほどで完了する予定です。


            新設された膨張護岸提(TP+14m)

      膨張護岸提背面(内陸側)に植栽されているクロマツ林

    次に、北海道胆振東部地震の災害対策を視察しました。地震被害発生後1年ほどしか経過していない中、勇払郡厚真町にて、北海道水産林務部治山課の土岐主幹から、災害対策についての丁寧な説明をいただきました。
 震度7の激震により、多数の死者、負傷者、住宅被害等が発生したのは周知のとおりですが、林務関連では、明治以降最大規模となる、約4300haの林地崩壊が発生しました。こうした広域の林地崩壊が発生した原因の一つとして、樽前山噴火などによって噴出した火山灰や軽石などの火山堆積物が弱い地層を形成していたことが考えられるとのことです。

 現在、治山施設の設置や林道等の復旧、被害木の整理・搬出と植林、木材の有効活用など、被災地域の再生に向けた総合的な対策に取り組んでいます。
 この中で、多数の林地崩壊が発生し人家が押しつぶされた吉野地区など、人命、人家等に被害を与えた山腹崩壊箇所は、最優先で、倒木、崩落土砂の一部撤去を行った後、法枠工、水路工、土留工などを、工区を分割しながら、大規模に施工中でした。また、関係者の協定により、倒木等の集積が効率的に行われ、その有効利用が進められていました。総被害額が500億円にも達した甚大な被害であることから、今後とも、復旧には各方面からの支援を得ながら、長期的に取り組んでいく必要があるとのことです。

 今回の研修では、2地域の大規模災害地を視察しました。近年は全国的に豪雨災害が多発しており、研修参加者からは、広域な災害が発生した場合の復旧対策や支援方策などについて種々の意見が出されました。また、今後ともこうした視察研修を設定していただきたいとの声が多数寄せられました。当社団では、技術向上や普及啓発を目的に、今後もこうした公益事業を続ける予定としています。

 
     北海道水産林務部土岐主幹から、復旧計画等の説明を受ける

 地震発生後、広域に土砂崩落が発生し、現在、崩壊地の土砂撤去と整形工事中

   主に法枠工法を主体とした斜面安定対策工事を施工中

 関係者協議により数か所に被害木置き場を設置し効率的な搬入利活用を実施

              視察研修の参加者

【トピックス 】材積把握の効率化に向けて


■材積(蓄積)の精度を考える

 森林・林業業務で材積や蓄積が必要になる場面は数多くあります。単木の場合は胸高直径と樹高を測定し、幹材積表から読みとるか、丸太の場合は最小二乗法などで計算し、立木蓄積は単材積を積み上げる方法などがあります。この場合、胸高直径は検尺しますが、簡素化を図るため、樹高は標準木を測定し他は推定するのが一般的です。樹種や地域、現場ごとに作成した樹高と胸高直径の回帰式を採用する場合もあります。高い精度を求めるには、全木の樹高測定が必要ですが、必要とされる精度に合わせ、労力の効率化を図っているといえます。なお、近年ではレーザー樹高測定器が普及してきたので単木の樹高検測が楽になりました。
 
かつて、間伐は標準地による推計、主伐は全木実測でしたが、国有林や公社林でも、近年は、林層区分や必要標準地数などの一定の条件のもと、主伐においても標準地による材積推計を行ってきています。精度が高いことに越したことはありませんが、業務の効率化が必要とされる今日、施業内容によって、労力を考慮し、多少精度が落ちても可としているのだと思います。保育的間伐、本数調整伐、低質木の主伐、森林簿蓄積などは簡易な手法でも良く、他方、高齢級の立木処分などは一定の精度が求められるのではないでしょうか。 近年は、高性能林業機械に付属した採材材積認識機器やタブレットを用いた丸太検尺ソフト、運搬車重量測定機などが導入され、川中、川下の材積把握法が効率化してきております。煩雑な原木流通状況の中で、契約上の課題や受け入れ時の確認行為はあるにせよ、効率的に行える場で清算を行えば、立木段階の材積把握は一定の精度で良いのではないかと思います。

    胸高直径の検尺         レーザー計測器での樹高測定


■ドローンによる材積把握
 林業においてドローンの活用法が多数検討されています。①森林資源調査(境界・林況調査、材積調査、収穫・間伐事業の確認調査、面積調査等)、②森林被害、森林病害虫調査(雪害・風害調査、ナラ枯れ調査、マツクイムシ被害調査等)、③災害・森林土木事業調査(災害対応、治山・林道等の調査測量設計、進捗管理・検査、構造物の保守管理・点検業務等)などへの活用が想定され、今後の用途は広いと思われます(冊子「秋田の森づくり」平成30年10~12月号参照)。
 小規模林分が多い民有林において、ドローンによる一定精度の材積把握が可能になれば、現場の労力はかなり軽減されると考えられることから、全国の林業現場で実証実例が増えています。
 ドローンにレーザーを搭載した場合では、実用可能な高精度データが得られる半面、大ロット林分調査に有効(逆に小規模林分には高額)、機材が高額で取扱いに苦慮するなどの課題が出されています。
 一方、ドローン写真を用いた材積把握の場合は、安価であり、民有林などの小規模林にも対応可能で、その手法が確立すれば全国に普及していくと思われます。特に、森林経営計画、森林環境譲与税などの対象となりやすい10~40haの林分材積の算出に効果的と思われますが、反面、精度の高い地盤高データが必要なこと、林層や現場の傾斜度、撮影時の気象などにより誤差が大きいことなども課題として報告されています。


ドローンを活用した治山施設の保守管理       ナラ枯れ探査


■胸高直径の推定
 材積を求めるためには胸高直径値が必要で、空からのドローンでは直接データを得ることができません。このため、胸高直径が樹高や林冠と相関が高いことを利用して、胸高直径を推計することが必要で、国の関係機関、大学、企業などから推計式が提案されています。こうした推計は樹種や地域、さらには、区域、対象現場ごとにきめ細かに実測が可能であれば精度は向上するので、レーザー解析であれ写真解析であれ、そうした実証を積み重ねていく必要があります。
 また、ドローンレーザー解析では表層、地表データの算出が可能で高い精度の樹高データが把握できますが、写真解析では、国土地理院の5~10m
メッシュの地上高データを活用することもあり、場所によって誤差があり材積推定にも影響が大きいといわれます。この場合、その補完も含め、対象地の標準地調査によって樹冠と標高、胸高直径との関係をある程度精査する必要があります。林コンでも、昨年度の県委託により、地上レーザー(「owl」)とドローン写真等を組み合わせ、林分の簡易な材積把握のため胸高直径と樹高の計測を試みています。
 
地上レーザー(アウル)による現地調査


■信州大学加藤教授の講演から
 去る9月12日、秋田県立大学で、ドローンによる材積把握の分野で先端を行く信州大学加藤教授による林業のICT化についての講演が行われました。
 ドローンレーザーによる材積計測はいよいよ実用段階であり、ドローン写真を活用した計測(「普及型」)も将来性は十分あるという回答を得ることが出来ました。一方で、加藤教授からは、長野県では既に精度の高い地盤高データを有していること、長年にわたる樹高や樹幹面積、胸高直径の蓄積データがあるため材積が推計しやすいことなどの回答も頂いています。長野県の現場では、レーザー解析とこれまでの蓄積から、多変量解析により相関係数0.9となるような推計式が策定済みということです。今後、本県でも効率的な材積把握に向け、樹高、樹幹径、胸高直径などの現地調査が進むことが求められます。
  
   ドローンによる材積把握について講演する信州大学加藤教授


■毎木調査箇所でのドローン実証を望む
 近年、低位安定の原木価格を背景に、森林所有者の取り分は原木価格の2~3割と少なくなり、結果的に再造林経費が生まれない状況となっています。県内の伐跡の再造林率(民有林)も2~3割にとどまっております。県有林、公社林、市町村有林などは採算性が合わなくても公益的観点も含め再造林を検討するでしょうが、森林所有者は自分の次の世代に煩雑さを残さないように、自家山林の主伐をきっかけに、再造林どころか土地自体を処分したいと思っている方が多いと聞きます。公的機関で買い上げしてもらいたいと思っている方もいると聞きます。
 林業の循環再生産の流れが滞っている現在、伐採搬出、流通経費の低減化はもとより、材積調査などの効率化も必要です。既に、宮城県、福島県の林業公社では、従来の調査法では労力、経費が多すぎるとして、ドローンによる材積把握を試行していく方向だと聞いています。本県においても、例えば、県有林などの毎木調査箇所で、並行してドローン調査を実証し比較するなど、今後の効率的な材積把握に向けた手法を検討していく必要があります。

【 ニュース 】大学生のインターンシップ研修を行いました

若者が就業体験を行い働く意識を高め今後の就職活動にも役立つようにと、林コンでは、毎年、高校生や大学生を対象にインターンシップを受け入れています。この9月には、北海道、鳥取、岩手、秋田の男女5人の大学生が、2班に分かれ、それぞれ3日間のインターンシップを経験しました。

   林コンで現在行っている業務や森林・林業の話題などについて、室内で説明を受けた後、現場に向かい、治山や林道、海岸林の各業務、森林公園のリニューアル事業などを視察研修しました。また、最近、森林分野でも普及してきたドローンの操縦実演も行いました。短期間なので実務の具体までは行えませんでしたが、社会人の心構えや職場の雰囲気などは理解してもらえたのではないかと思います。

 若者の県外流出が続いている本県ですが、こうしたインターンシップを経験しながら、是非、県内にも自分を生かせる魅力ある職場があることを知ってもらい、今後の就職活動に生かしてもらいたいと思います。


北海道から参加した学生に現在行っている業務の内容を説明しました

秋田、岩手、遠く鳥取からの学生も研修に参加してもらいました

 森林公園で、樹木整備に向けた森林調査について説明しました

  森林調査で活用されているドローンの操縦実習も行いました

【 ニュース 】令和2年度森林土木事業関連の概算要求について

令和2年度予算の概算要求内容が8月末に公表され、林野庁関係では、『林業の成長産業化と「林業イノベーション」の推進 』を軸として、9項目が重点事項として掲げられました。その中で、森林土木事業関連は次の3項目です。

①森林整備事業・・・林業の成長産業化と森林資源の適切な管理を実現し、国土強靭化や地球温暖化防止等にも貢献するため、新たな森林管理システムが導入される地域を中心に、間伐や路網整備、再造林等を推進
②治山事業・・・豪雨災害など激甚化する災害に対応するため、荒廃山地の復旧予防対策、危険地区の治山施設の機能強化・老朽化対策、総合的な流木対策を推進
③農山漁村地域整備交付金・・・地方の裁量によって実施する農林水産業の基盤整備や農山漁村の防災・減災対策に必要な交付金を交付

  具体的な概算要求額は、森林整備事業が対前年度比122%の1490億円、治山事業が対前年度比122%の740億円、農山漁村地域整備交付金が対前年度比120%の1113億円となっています。
 また、平成30年度補正から、「臨時・特別の措置」が別枠として設置され、昨年度は林野公共に441億円、農山漁村地域整備交付金に50億円が上乗せされました。「臨時・特別の措置」は、消費税率引上げの影響や最新の経済状況等を踏まえ、具体的な規模等は予算編成過程で検討していくことで、7月末に閣議決定されています。林野庁では、防災・減災、国土強靱化のために、概算要求額に上乗せを図りたい計画としています。

 全国で集中豪雨等による大災害が発生するとともに、本県では、路網、治山とも未だ未整備な箇所が多くあるため、臨時・特別の措置を含め、次年度予算の大幅な獲得に向け、関係各位に頑張っていただきたいと思います。


    機能強化、流木対策のための治山工事(仙北市岩井沢地区)

【 ニュース 】林業予算要望活動に出席しました


    去る8月7日、「秋田県森と水の協会」が主催する次年度予算の要望活動に津谷永光会長他12名が出席し、林野庁、財務省、国会議員に対し、次年度林業予算の要望活動を行いました。林コンから小川理事長、熊谷専務理事、三浦理事が出席しました。
 特に令和元年度は、「臨時特別の措置」が設定されたことにより、公共予算の大幅な増加が達成できましたが、未だ、県内の事業要望箇所が多数あることから、市町村長等正会員、林業団体長等賛助会員の連名で要望書を作成のうえ、本県の現状や要望の具体的な内容を関係各位に説明して参りました。

 (要望内容)
1.治山事業予算の確保
 ①25年災、30年災の復旧のための予算充実
 ②荒廃危険山地での事前防災・減災対策、流木被害防止対策の予算充実
 ③治山施設の点検や補修に関わる予算充実
2.森林整備予算の確保
 ①再造林対策の充実と造林公共事業予算の確保
 ②林内路網の計画的な整備や橋梁等の改修に要する予算の拡充
 ③林業成長産業化総合対策等の充実・強化のための予算の確保

 要望先は本郷浩二林野庁長官、小坂善太郎森林整備部長はじめ公共事業予算担当の各課室長、金田衆議院議員ほか4名の自民党地元選出国会議員などです。本郷長官からは、「本年度は今まで以上に予算が付いたが、臨時特別の措置の終了後も考え、しっかり予算対策を講じて参りたい。」などの言葉を頂きました。

           本郷林野庁長官への要望

 
                       小坂森林整備部長への要望

【 ニュース 】中国緑化事業視察に参加しました

 林コンでは、7月29日~8月3日に、昨年に引き続き、中国緑化事業視察に参加しました。今回は、公益事業課の佐々木明人主幹が同行しました。


   視察先は、蘭州市の皐蘭山造林地、九州山造林地、興隆山天然林、天水市の黄土高原植生回復事業地などです。年間降雨量は蘭州市が300~400mmで人工的な散水が必要ですが、南東側の天水市は520mmで散水の必要がありませんでした。乾燥地において、降水量120 mmの差が植生の生育状況に大きく影響していることが実感できました。

 土質は、シラスをさらに脆弱にしたような黄土であるため、各所にガリー浸食が見られ、将来的に森林基盤の安定を図る対策も必要ではないかと思われました。


 両市とも砂漠化の拡大が懸念されている地域で、1982年より県と甘粛省との技術交流により森林化を目指して今日に至っています。植栽地の順調な生育は、顧問として同行した武田英文林業育成協会会長らの指導の賜であり、今後とも、活発な技術交流が行われることを願う次第です。

 
                               蘭州市の皐蘭山造林地の散水状況


  天水市の黄土高原植生回復事業地で植栽されているアブラマツ


       植栽ピッチの確認(黄土高原植栽回復事業地)


          天水市で見られる斜面崩壊

 
                                甘粛省森林草原局との意見交換会



             視察団のメンバー

【 ニュース 】治山・林道(路網)事業担当職員技術研修に参加しました

 去る7月29~31日、北秋田市で令和元年度治山・林道(路網)事業担当職員技術研修が行われました。全県から、県の治山・林道等の事業担当者約50名が出席し、山腹工や林専道について現地調査を行い、測量・設計を研修するとともに、施設の点検診断、設計積算、検査などの案件について議論を深めました。林コンからは公益事業課、阿部課長ほか3名が参加しました。


 近年、本県では測量設計を外部委託することが多く、県の事業担当者が現地の測量や対策工法を立案する機会が少ないため、その技術確保が課題となっており、測量・設計に関わる外業、内業を自ら行う現地研修は貴重な機会ということです。常時、現地測量・設計に関わっている林コン職員も各班に配置させていただきました。 


  また、治山・林道施設の点検診断の方法、評価や対策工法などについて、林コンの阿部課長が講義を行いました。コンクリート劣化、鉄筋腐食、設計・施工上の問題など種々の理由で、年数の経過により施設劣化が進む状況が理解でき、保守管理の大切さを改めて確認できたと思います。


  当技術研修会は、全県から集まった県の事業担当者の皆さんと活発な意見交換を行うなど、業務を進める上での技術や意欲の向上に大変意義がある機会であり、今後も引き続き参加して参りたいと思います。

 
                   治山の山腹工現地調査・測量

             林道の現地確認
          グループごとの対策工法の検討
            グループごとの検討結果の発表
  阿部課長による「治山林道施設の点検診断・対策工法」の講義

         県の治山林道事業担当者の皆さん

【トピックス 】ドローン散歩:大潟村防風林


 大潟村の防風林は、昭和30年代からの国営干拓事業の実施時、オランダの干拓地を参考に、防風効果と景観を考慮して設計されたと云われます。今では、ポプラとクロマツ、樹種転換として植栽してきたケヤキ、ヤチダモ、ハルニレなどの広葉樹により、「広大な田園、何処までも続く防風林」という大潟村独特の景観を保っています。
     
  干拓事業時の計画では、地下水位の低下を待って、始めに、生長の早いポプラを中心に植栽し、ある程度成長した後、ポプラの寿命が短いことを念頭に、次第に、同じ陽樹でも丈夫で風害に強いクロマツに更新していく計画でした。実際、大潟村の東側に位置し南北に伸びる防風林の一部は、上木ポプラと下木クロマツの珍しい二段林を形成しており、当時の計画の一端を伺うことができます。

  年月を経て、予想通り、ポプラの加齢や幾多の台風被害により、ポプラ林が次第に倒伏し疎林化するものの、管理していた大潟村の予算不足や野鼠害等から、クロマツなどへの樹種更新が計画通り進まない状況となっていました。
                 拓地であり地下水位が高いため植栽にあたっては溝切や盛土も行われた


        過去の台風被害などにより疎林化している箇所も目立つ


 こうした事情を背景に、平成の時代にはいり、風害対策や住民の利便性向上を目的として保安林に指定され、治山事業による改植が進むこととなります。場所によって、溝切り、土盛りなどの地下水位の上昇を防ぐための基盤整備を行いつつ、疎林化した地域を中心に広葉樹植栽が進められました。また、マツクイムシ被害がクロマツ防風林内に散見されるようになったため、クロマツから広葉樹への樹種転換も図られました。

 近年、防風林のさらなる疎林化が進んだのか、新たな植栽計画もあると聞きます。防風林は面積、延長とも広大であり、景観維持や観光振興に一役買っている箇所も多くあります。ポプラ、クロマツなどの既存立木を大切にしつつ、疎林化した箇所を中心に、ゆっくりした樹種転換が進むことを願う次第です。

       大潟村のポプラの防風林、独特の景観を保っている
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